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正史にもとづく「三国志」の旅の始まり

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宮城谷昌光氏の「三国志読本」を正月明けに読んで、宮城谷氏の「三国志」が正史に基づく大作であると知り、古代中国・後漢の時代への旅が始まった。

 

前回挫折した、第一巻は結局読了するのに1週間以上かかってしまった。四知を唱えた楊震。ネットで探してみると、このようなイラストがあった。楊震のあざなは伯起で、伯起公像というイラストもいくつかあった。「明経博覧」つまり経書に明るく驚異的な知識の持ち主で、関西の孔子とも呼ばれていたようだ。

 

そんな楊震は、第一巻の前半で早くも没する。それも自殺という形で。これがこの時代背景を物語っている。

 

第一巻で自分の知っている吉川「三国志」の登場人物の名前はたった二人だけ出てきた。袁紹曹操曹操の祖父にあたる曹騰が登場人物としては、第一巻での重要なポジションにある。あとは袁紹のルーツ上の人物、、、名前を忘れてもよい脇役。

 

それにしてもこの時代は、日本の古代もそうだったと思うが、皇位継承というかそれに伴う権力闘争が頻発し、その勝敗で権力マップが一夜にして変わってしまうという非常に不安定な時代だった。そこに生きる人々も、昨日までの正義が今日の悪徳となり、本当の正義を自分の中に持ち続けるのはとても困難だっただろうと思う。

 

楊震が自殺に追い込まれたのもそういう背景だ。

これまで比較的安定政権だった鄧兄妹政権だが、その中心的存在であった鄧太后の死によって、一気に反対勢力がクーデターを起こす。そのクーデターの本人は、それまで鄧太后が摂政により政治補佐してきた安帝であり、この反対派の最高権力者の登場で、楊震はたちまち訴追され、ついには自ら命を絶つ。

 

こういう権力闘争の背景には、必ず女性の力があった。この鄧太后も女性として権力を掌握していたし、次には安帝の皇后(閻皇后)やその乳母などの取り巻きが、あっという間に権力を掌握してしまう。愚帝を思うままに操るという感覚だ。

 

この安帝とその取り巻きによる低迷政権がけっこう続く。その安帝が没するときが一つの政権交代のチャンスではある。そこで、親政派と反勢力の戦いが起こる。その軸は、帝位の継承だ。すなわち誰が次の皇帝となるか、、、というより次の皇帝を誰に仕立て上げて自分が権力の座につくのかというのが、最大のポイントとなってくる。ここに醜い争いが勃発する。

 

その醜い争いの中で、人知れず「本当の正義」を見極め、それを心に秘め、時期を見失うことなく行動に出る数少ない勇者がいた。来歴であり、孫程であった。

 

来歴は、安帝政権に対し自身の正義の信念を貫いたが、その時には受け入れられなかった。

 

孫程は、安帝没後の帝位継承で正当な継承のためにクーデータを計画し成功に導いた主役である。この成功のシーンは劇的だった。正当政権を獲得した順帝は、クーデターを命がけで成功させた19名すべてに報奨を与え、これまで苦汁をのんできた楊震や来歴らの功績を正しく認めることのできる賢帝だった。

 

こうしてやっと安定した時代が迎えられるのかと思いきや、この時代は乱世である。この乱世の展開が、引き続き第2巻で展開されていくものと思われる。

 

 

三国志 第一巻

三国志 第一巻