乱読のセレンディピティ
少々多忙なシーズンだ。通勤カバンの中には、楽しみの宮城谷「三国志」の第2巻が入っているが、あれは「本気で読むぞ」という気持ちで読まないと内容がぼけてくるため、自主的に一時停止中である。
そういうじっくり落ち着いて読めないときには、新書やこういう「読書のための本」みたいなのを手に取ることが多い。「読書のための本」には、「読書とは何か」を語るものもあれば、「読書の効用」を語るものもあるし、「オススメ本の紹介」的なものもある。どれも興味深いが、本書は「読書の方法論」的な本だろうか。
以前、「知の巨人」と呼ばれる立花隆氏と、「知の怪物」と言われる佐藤優氏の対談本「僕らの頭脳の鍛え方」と言う本を読んだことがある。そこにはずらりと両氏のオススメ本が紹介されていた。それらを片っ端から読んでいけば「知の巨人」とまでならなくても、「知の小人」くらいは目指せるかもしれないと感じたが、果たしてそうすることが自分にとって意味あるのかと考えてみたら、すんなり「ない」という結論に至った(笑)。
多数列挙されているリストの中から本当に読んでみたいなと思うものだけを数冊ピックアップして自分の読書リストに加えた覚えがある。やはり若いころにいろいろなものを読んでおくのがよいと後悔した。歳をとってからだと、よい本でも自分にとっての「賞味期限」が切れてしまっていることが多いと感じる。
ところで、この本のタイトルの「セレンディピティ」という言葉は、日常あまり使う言葉ではない。サブタイトルにある「思いがけないことを発見する」という意味。科学の研究などで、目指している研究の中で、まったく予想外の発見がされた場合などで使われる言葉のようだ。
本書は、著者の豊富な読書の経験と豊富な著書執筆の経験の中から発見されたことをエッセイ的にまとめられたもので、そこからまた読み手もいくつかの発見が得られるように思う。
著者は、「乱読」そして「乱談」(雑談、座談のようなイメージ)をオススメである。
一つのジャンルにこだわっているのではなく、知らない世界に飛び込んでいくようなイメージで自分はとらえた。
「乱読」の章では、あらかじめ知識がある程度ある内容を読むことを「α読み」とし、全く知識がない内容を読むことを「β読み」として、著者は「β読み」のほうを奨めている。乱読ができるのは「β読み」ができる人だそうだ。
興味がわいたら知らない分野へでも飛び込んでみよう。知識ばっかり増やしても「知識メタボ」になるだけ。思考力を鍛えよう。というようなことを著者のメッセージとしてうけとめた。