気ままな読書ライフ

気ままな読書日記

男女間の不合理、親子間の不条理

 

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

 

 

この本は何度か読んだが、自分では「よい本」と認識しているので、自分のブログの記事には絶対に入れておきたい一冊だ。「よい本」というのもおこがましい程の著名な本「学問ノススメー福澤諭吉著」の現代語訳版だ。

 

なんといっても明治維新直後のベストセラーであり、本書はかの斉藤孝氏のわかりやすい翻訳で、今でも人気のある本であると思う。

 

発刊直後に即購入して読み、その後司馬遼太郎さんの「花神」を読んだ時に、「花神」の主役・大村益次郎と同じく適塾緒方洪庵に学んだ人物であるのに、大村と対極的な生き方をした福澤が描かれていたので、もう一度読んでみようと思ったのが再読のきっかけだった。

花神(上) (新潮文庫)

花神(上) (新潮文庫)

 

 そもそも大村益次郎福沢諭吉とはキャラクター的に全く正反対であり、生き方が対極的なのは当たり前かもしれないが、大村はある意味「軍事の面」で革新的であり、福澤は「思想の面」で革新的であったので、どちらも「革新的」という点ではくくれるかもしれない。

 

ところでその福澤諭吉の思想面での革新性に「平等」の考え方があると思う。

士農工商階級意識が定着していた前時代から、新しい時代を迎えるにあたり、いち早く発想を切り替えることができたのが福澤だ。しかもその啓蒙活動をさっそく始めるその行動力がすごい。

 

これまで学問がなかったために、見えない権力構造にコントロールされ、自らも委縮し続けてきた一般庶民に、明治維新の到来とともに本当の「平等」の意味を明確に知らしめ、そこを原点として一つひとつ世の中の本来の在り方、基本的な考え方を解き明かしていった。

 

天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」とは最も有名な言葉だが、その「平等」の考え方を原点として、政治や経済の基本原理を庶民に分かりやすく説明し、国家と国民の関係、権利と義務のことまでも誰もが理解できるようにテキスト化したのがこの本であったと言える。
 
しかも、本書が面白いというか、読んで痛快に思えるのは、福澤諭吉の物言いが、歯に衣着せぬところだ。良いものは良い、悪いものは悪い、徹底した是々非々である。それが非常に小気味よい。

 

 
目次はこんな具合だが、その真ん中あたりに「男女間の不合理、親子間の不条理」とある。
 
 学問には目的がある
 人間の権理とは何か
 愛国心のあり方
 国民の気風が国を作る
 国をリードする人材とは
 文明社会と法の精神
 国民の二つの役目
 男女間の不合理、親子間の不条理
 よりレベルの高い学問
 学問にかかる期待
 美しいタテマエに潜む害悪
 品格を高める
 怨望は最大の悪徳
 人生設計の技術
 判断力の鍛え方
 
現代社会ですらセクハラだの人権問題など誤解があるのに、福澤氏はすでにこの時から女性進出を訴えているその先進性には驚きだ。
 
また、親子の関係性についても当時としては全く革新的なくらい、子どもの権利を尊重し、大人の身勝手を指摘している。特に昨今は、子どもを親の所有物と考えているような事件が後を絶たない。もう一度、福澤諭吉の原点的な庶民教育が必要ではないかとさえ感じる。
 
福澤諭吉が、いまTVに登場し、ダイバシティや教育問題等について論じたならば、不合理を徹底的にこき下ろし、視聴率のメーターは振切るのではないだろうか(笑)。
 
 
 
 

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