気ままな読書ライフ

気ままな読書日記

夏井先生の「子規365日」

先日の三木清の「人生論ノート」では、文意の理解のほうに随分エネルギーを要したので、次は比較的さらりと読めそうな本にしようと思い、kindle本で夏井いつき先生の「子規365日」を読み始めた。もともと朝日新聞の愛媛版で「子規おりおり」というコラムとして連載されたもののようだ。

子規365日 (朝日文庫)

子規365日 (朝日文庫)

 

 

家族共用で利用しているkindle本のライブラリーにいくつかある未読本の一冊だ。恐らくプレバト好きの家内がワンクリック購入したものだろう。もちろん、今回これを選んだのは、私もプレバト好きの一人だからだ。ただし、俳句のほうはあまりわかっておらず、番組ではハマちゃんや梅沢富雄のトークバトルやフルポン村上の意外な才能などを見聴きしてバラエティとして楽しんでいる口である。

 

それでも「俳句」はあの短い言葉の中に、いくつもの思いを表現することができて、できる人はすごいなと感心している。現代のプロの夏井先生が、少し前の郷土の先輩歌人正岡子規の作品を1日1句セレクトしてコラム記事にしているのだから、本書を読むだけで、最高級の歌にふれられる満足感というか幸福感みたいなものがある。

 

最初の1月1日の句から読み始めたが、同じ季節を味わってみたいなと思い、2日めにして、11月5日までワープしてしまった。そして今日はついにクリスマスから大晦日に至った。

 

12月31日 「来年はよき句をつくらんとぞ思ふ」 1897年(明治30年

 

夏井先生は当然、子規のこともたくさん研究されており非常に詳しいが、日によっては子規の句から自分の思いに至り、特に食べ物の句の場合には、それをツマミに酒が飲みたいという話題になることがしばしばだ。夏井先生は非常に酒好きのようだ。

 

それともう一つの特徴は読書家ということだ。時々、「いまこの本を読んでいる」とか「この本を読みだした」とかの話題が出てくる。そもそも、本書の「まえがき」では、司馬遼太郎の「坂の上の雲」に登場する正岡子規のことに触れられている。なんと司馬遼太郎氏も正岡子規のファンだったんだ・・・と本書の「まえがき」を読んで初めて知った。

 

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

 

 

そして、今日大晦日の句を読み終えたあとに、著者の大連吟行の紀行文が載せられていた。正岡子規が従軍記者として大連に渡ったことで現地に作られた句碑が、一時行方不明になっていたところ、発見され愛媛県人会の手により再興されたものを見に行くツアーだったようだ。その従軍記者時代の子規も、「坂の上の雲」では読むことができるのだろう。

 

ちょうど並行読みしている「司馬遼太郎のリーダーの条件」(文春新書)でも、半藤一利磯田道史関川夏央氏ら歴史通大物5人で「坂の上の雲」について語り合っており、「坂の上の雲」カブリの状態が発生した。

 

司馬遼太郎 リーダーの条件 (文春新書)

司馬遼太郎 リーダーの条件 (文春新書)

 

 

さきの夏井先生の「まえがき」には、関川夏央氏の「坂の上の雲と日本人」という著書を読んで、なぜ日露戦争を描いた小説に正岡子規という俳人の存在が必要だったのかという疑問がスッキリ晴れたと書かれていた。

 

「坂の上の雲」と日本人 (文春文庫)

「坂の上の雲」と日本人 (文春文庫)

 

 

ということで、夏井先生のワープした未読の部分を読み終えてから、夏井先生に続き、「坂の上の雲における正岡子規の登場の必要性について知ってみたい」という好奇心がこみあげてきている。