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子育てするなら読むべき本 「毒になる親」

 

毒になる親

毒になる親

 

 

毒親」とは、1989年に本書の著者が「子どもの人生を支配し、子どもに悪害を及ぼす親」を指す言葉として作った造語である。昨今この言葉を使った本も多く出ている。

 

「自分の親はそういう親ではないか」という不安や恐怖とともに本書を手にした方もいるだろうが、私は逆の立場で手にした。すなわち自分はその「毒親」に違いないと思い、その自覚と改善で、療養が長引く娘を少しでも早く救うことができないだろうかという思いで読んだ。同種の本も多数読んでいる。

 

これは恥をさらすようではあるが、これから子育てをされる方々が同様の辛い思いをされないように、情報共有させて頂きたい。

 

本書はすでに「毒親」と言う言葉に何かを感じる方が手に取るにはやや遅すぎる本であり、むしろ何も悩みがなくても、子育てをスタートする全ての両親が知っておいて有効な情報であると思う。

 

そもそも、「毒親」というのは、自分が「毒親」であるということが全く分からず自覚がない。むしろ子どものことを第一に考えたり、大事にしたいという気持ちが強く、そういう意識で子育てをしている方が多いかもしれない。

 

あるいは「自分は子どものころ、あまりよい子ども時代を送れなかったから、せめて自分の子どもには、存分に幸せにしてやりたい」と考えたり、「自分ができなかった分、子どもには、そういう理想的な生き方をさせてあげたい」とか、「自分は子ども時代に好きなことができなかったのだから、これから子どもと一緒に、色々なことを楽しんで、自分も生きなおそう」とか、そういう風に考えている善意の親が、「毒親」となってしまう場合も多いと思う。

 

さらには、「子育て、よくわからない」「どう育てていいのかわからない」「子どもを愛するってどういうことだろう」って感じるような人も、「毒親」となってしまう可能性が十分にあると思う。

 

本書の中に、”「毒になる家系」においては、毒素は世代から世代へと伝わっていく性質を持つ。誰かがどこかで意識的に止めない限り途切れることがない。”という表現や、”輪廻をどこかで断ち切らねばならない”という言葉が出てくる。

 

本人に自覚がなくとも、すでに自分の子ども時代に、良くも悪くも親の影響を完全に受けきってしまっており、それは遺伝子のように知らず知らずのうちに受け継がれてしまっているようである。もし自分の親が「毒親」であった場合には、自分がいかにそれを反面教師として、違った人生を進んで行こうと心の中で誓ったとしても、自覚しないうちに同様の道を歩んでしまっているのが現実のようである。

 

その改善には、自らの気付きによる自覚が必要である。
そういう気付きを得るには、本書のように、専門的に研究された人の本を読んだり、専門家のカウンセリングやセラピーを受けるなど、自分の外側からの刺激が必須である。なぜなら、「毒になる家系」とあるように夫婦もその両親も似た者同士である場合が多いから、その間では気付かないのである。

 

以下、本書の中から得られた有効と思える情報を共有したい。

 

・多くの「毒になる親」に共通していること=自分の不幸や不快な思いを他人のせいにする。そしてその対象にはたいてい子どもが使われる。
※人間の感情が他人の言動から影響を受けるのは事実だが、大人であるなら、誰かに傷つけられた時にも、自分を癒すのは自分の責任である(=子どもに当たるな!自分の不快は自分で解決)

 

・「親は絶対である」「いつも自分は正しい」というタイプの親は、好んで勝手なルールを作り、勝手な決めつけを行い、子どもに苦痛をもたらす。

 

・親子が逆転(=親が自分の責任を子どもに押し付け)
夫婦喧嘩の仲裁をさせているとか、親の不安を子どもに聞かせているなどはコレに該当するだろう。
→子どもは自分で自分の親を演じなければならず、時には親の親にまでならざるを得ないことがある。そして、子どもには、本来見習うべき人、教えてくれる人がおらず、頼るべき人もいない。大人になっても、物事をやり遂げる力が育っていない。

 

・子どもをコントロールしようとする親は、自分自身に強い不安や恐怖心があるため、子どもに干渉ばかりしている自分をとめることができない(←麻薬的だ)。
※子どもの独立を恐れる。子どもに非力感を植え付ける。(自分の支配できる存在を失うのが不安=つまり完全なる親の子への依存)

 

・暴力や言葉の暴力のような目に見えるものだけが支配ではなく、親が心の中にもっている考えが、子どもに影響を与える(本書の中では「操り人形」と表現していた)。
例えば、親が心の中で「自分より偉くなるな」「自分を差し置いて幸せになるな」「親の望む通りの人生を歩め」「いつも親を必要としていろ」「私を見捨てないで」などと考えているとしたら、それは紛れもない「毒親」である。

 

***

 

本書は、「毒親」がどういうもので、なぜそのような事態が起こるのかを明らかにし、そういう事態に巻き込まれた人を救い出すためのプロセスや方法を示している(ただし、本書を読んだだけでは解決はせず、必ずプロの支援が必要と思われる)。

 

そのプロセスの最後のほうに、「本当の自分になる」という章がある。そこにこうある。

 

親(やその他の人たち)の要求や意向に影響されず自分自身の考えでものを考え、自分自身の感覚でものを感じ、自分自身の意思で行動している時、あなたは本当の自分になっている。

 

「親の言うことを聞かないと怒られる」とか、「親の言うことをきかないと親が悲しむ」とか、「親が喜ぶならやろう」とか、そういうことを考えている自分があるなら、それは本当の自分ではない。

 

ちゃんとした親に育てられたなら、親に対してそういう気遣いをする子どもとしては、育たなかったはずであるのだ。すでにその時点で親の毒素の影響を受けている。

 

本書は、事実を知るための入り口の本であり、本書のみで問題の解決は不可能であろうが、例えば自分自身が自分の親からどのような影響をうけているかを自覚したり、自分が親として自立しているか(=子どもに依存したり、支配したりしていないか)を確認するに、非常に有効な書であると思う。

 

知らず知らずのことが、子どもに多大な苦労を強いることになり、そのことで親自身も悩まねばならないことを考えると、本書のような情報に少しの時間を割くことは大きなメリットがあるのではないかと思う。