日本でいちばん長い日
夏休み、自分自身の「読みたいリスト」に入れてある幾つかの本を読みたいと考えていたが、そのうちの一冊「日本のいちばん長い日」を、終戦記念日の8月15日から読み始め、やっと今朝読了した。
考えてみれば、8月15日の終戦記念日といっても、特に「戦争」や「平和」ということについて考えてみることもなく、毎年「暑さよ、早く通りこしてくれ」と思う程度の一日を過ごしてきた。直前の8月6日や8月9日の広島、長崎に投下された原爆の記念日の式典の模様を伝えるニュースを見て、戦争があったことを少し意識する程度の毎年であった。
今年はこの本を読んで、少しは意義を意識する一日としてみようと思い、暑さ対策もかねて新しく見つけた「かき氷やさん」に、しばしお世話になった(笑)。
この本については、数年前(2015年)に二度目の映画化で話題になっており、「本は読んでいないけど映画は観た」という知人は何人かいた。陸軍大臣が役所広司、昭和天皇を本木雅弘が演じた話題作だ。
自分は映画も観ていないが、観るなら本を読んでからの方がいいだろうなと思った。もちろん映画だけでも、この日本でいちばん長かった一日の歴史を知る意義は深いと思う。
本書は「決定版」として1995年に初版の内容を補追されて出版されたもので、初版はその30年前に出版されている。30年前の初版が出されたときにも、第一回目の映画化がなされている。このときの陸軍大臣は三船敏郎、時の総理大臣・鈴木貫太郎を演じたのは笠智衆というから歴史を感じる。
歴史探偵と自らを名乗る著者半藤利一氏は、この昭和の謎解きに特に注力されており、初版以降の探究の成果をこの決定版に反映し、より真実性の高いものへと仕上げられたようだ。
副題に「運命の八月十五日」とある。8月14日正午から8月15日の正午までの24時間にこれだけの緊迫した展開があり、運命の8月15日を迎えたことを知って、まさに「日本でいちばん長い」という形容は間違いではないと感じた。
「敗戦」と一言で片づけることはできない。よくドラマで使われる天皇陛下の玉音放送、あれで日本国民は敗戦の事実を知ったのだけれども、あの玉音放送がなされるまでに、日本の運命を左右する様々な出来事が次々とこの24時間の間に起こっていたとは、この本を読むまでは知ることはなかった。
神であった昭和天皇こそが、もっとも人間的であったという事実を知ることができる。
最後まで「敗戦を認めること」に抵抗し続けた軍部(特に陸軍)に浸透した「国体」というものに対する精神がどのようなものであったかを知ることができる。
その陸軍のクーデター等に屈することなく、戦争終結を実現した政府の命を賭した戦いを知ることができる。
これは、読み継がれていくべき本だなというのが強い読後の感想です。
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