気ままな読書ライフ

気ままな読書日記

心のメカニズムを知りたい

 

無意識の構造 (中公新書)

無意識の構造 (中公新書)

 

 

心理療法を受けている家族がいると、心のメカニズムなどにはとても関心が湧いてくる。これは、その家族のためだけならず、自分のためにもだ。

療養中の家族の心の治療には、その周囲の家族の心の状態の改善も重要であると、ここ数年の経験でそう思う。自分は治療を受けていなくとも、その治療を理解することはとても大事であるとも感じる。

 

そう感じるので、自分の場合は河合隼雄先生の本を読むことが多い。河合先生は、日本では著名な、ユング派の心理療法家だ。自分では「読書が好きなわけではない」とか言いながら、ものすごい読書量であり、著書も多数あり、そしてまた読まれた本に関する随筆などを読むと、「そういうふうにとらえるのか」と読み方の深さにまた感動すること多々である。

 

 

本を読むときの心の開放度が違うんだろうなと思う。自身の経験でも、身構えて読んだときと、心全開で読んだときとでは、入ってくる質や量が全然異なると感じる。というわけで、なるべく心を開いて読むのだが、実はこの本は少々身構えてしまった(笑)。

 

ふだん読んでいた河合先生の随筆などは、日常のよくあることに対して、ちょこっと心理療法家の観点で、「なるほど」と思うようなツッコミをされたりして、比較的楽しく、また啓発をうけながら読むことができる。しかし、この本は、ユング心理学に関する学術的な内容が書かれたものであり、表面のみの情報を扱っているとはいえ、河合先生の本気の内容が書かれているのである。正直、「難しかった~」という印象だ。

 

ユングは、フロイトとともに深層心理学の大家だが、師事していたフロイトユングが袂を分かつことになったのは、無意識層のとらえ方に考えの違いがあったからのようだ。難しい話はよく分からないが、ユングフロイトも、無意識層から意識層へのメッセージである「夢」についての研究を行っている点は共通している。

 

心理療法を受ける家族も、夢を扱う治療を行っているようである。治療の内容は、家族であろうと開示してはいけないことになっているらしく、詳しいことはよく知らない。

 

自分自身、最初は治療の内容が開示されない療法に随分疑念を抱いた。騙されているのではないかと本気で思っていた。今から思うと、そういう心の家族の存在は、確実に治療の妨げになっていたと感じる。それが改善されて、治療が進むのである。

 

そういうわけで、家族のためにも、自分のためにも、自分の心を正しく維持していくことは大事だなと考えている。

 

この本は、心理療法のノウハウを書いたものではない。見た夢から、そのメッセージをどう解釈するのかとかの手法を述べたものでもない。というか、そういう夢の解釈はプロにしかできない。素人がやることは逆に危険だろうとさえ思う。

 

では何が得られたかと言うと、意識の下層に無意識層があり、その無意識層には家族的無意識とか、文化的無意識とかがあり、そのもっと底の部分には、全人類がつながっていたり、宇宙とつながっていたりという層があるという、そういう「無意識の構造」の存在について学べたことだ。

 

「夢が無意識のからのメッセージだ」ということが信じられなければ、ユング派の心理療法は詐欺にさえ見えるだろうと思う。意識層で悩んでいることが、自分の意識ではどうしても改善できなくても、その原因が無意識層にあり、それを改善していくことができるのなら、希望ができるし、しかも実際の改善事例が事実を裏付けている。

 

ユングが自分自身のからだで、無意識層の解明をしようとした格闘の模様が少し紹介されていたが、その結果としてユングの発見の一つに、古代から存在する仏教の中にすでに共通の真理が示されていたということがあったようだ。

 

河合先生の本に、「ユング心理学と仏教」という本があるようであり、これもいずれ読んでみたいなと思う。 

ユング心理学と仏教 (岩波現代文庫 〈心理療法〉コレクション V)

ユング心理学と仏教 (岩波現代文庫 〈心理療法〉コレクション V)