気ままな読書ライフ

気ままな読書日記

「こころの傷が治った」

今度は、具体的な心理療法に関する本である。河合先生と同じユング心理学に基づく心理療法家・網谷先生とその師匠の織田尚生先生のかカウンセリング事例紹介本である。心が病んでしまった子どもが、心理療法により症状が改善した17事例が紹介されている。

 

 

 

一口に改善といっても簡単なことではないので、ここに示された実績は、非常に貴重なものであるということできると思う。ただし、カウンセリングの具体的内容や、そのプロセス、改善経緯などを詳細に示されたものではない。

 

読者としては、そういうところを知りたいとは思うのだが、個別のケースのそういう細かいプロセスを知ることにはあまり意味がないのだろうと思う。心が病んでしまった子どもは「治る」ということと、「治る」ためにはその家族(特に両親)が先に「治ら」なければならいということ知る必要があるのだと思う。

 

以下、本書冒頭の「この本を読んでくださる方のために」から抜粋。
 
◆わたしたちの社会
学校に行きたくてもいけない、不登校の子どもたちが、全国の小学校や中学校にたくさんいます。また一方では、別の問題として、少年の非行や犯罪の増加が社会問題になっています。・・・このような加害少年たちも、彼らに適切に対処できなかった家族も、あまりにも大きな矛盾をかかえた今の社会による、犠牲者なのかもしれません。
 
◆子どもの心の叫び
少なくとも、お母さんやお父さんが自分自身のこころを開くことができれば、傷ついた子どものこころの叫びが聞こえ始めます。・・・本書には、いろいろなこころの問題をかかえた子どもたちに対する、遊び治療や心理面接のさまざまの事例が語られています。
 
◆家族の課題を映す鏡
今の社会では、大人でも子どもでも、明るさや社交的であることがよいこととして評価されます。スポーツができることも、望ましいこととされます。これとは反対に、無口で暗い印象を与えると、周りの人たちから嫌われます。そして何よりも、わたしたちは周りの人にどのように思われているのかということが、とても気がかりです。・・・現代に生きる私たち全体が、自信や信念を持つことができず、人と強調することばかりに気を取られる傾向をもっているようです。ともすれば相手の要求に屈して、理不尽なことでも受け入れてしまいます。これは個人や家族の課題であるばかりでなく、国家の課題なのかもしれません。
 
・・・子どもたちのことを思うとき、お父さんやお母さんを含む家族のあり方を検討することは、とても大切です。・・・子どもは家族の課題を映す鏡であるともいえるでしょう。
 
◆家族が変わるためには
子どものこころの傷つきが癒されるためには、家族の在り方が変わらなければなりません。家族全体の問題です。それは何よりも、わたしたち母親や父親の問題なのです。
・・・子どもの問題が家族のなかだけでは解決しない場合、家族の誰かが窓口になって、カウンセラーの援助を受ける必要が生じてきます。
 
◆カウンセリングとは何か
こころの傷つきをかかえた人たちに対して、心理学的な方法(面接)を用いて治療者が援助する方法を、心理療法、あるいはカウンセリングと呼んでいます。ここで用いられているカウンセリングの方法は、ユング分析心理学的なやり方です。
 
・・・クライエントは、自分の生き方を自分の責任で決定する必要があります。カウンセラーが、担当している子どもたちや大人のこころから、大切なことを学び、彼らに寄り添っていけるならば、援助の道はおそらく、自然に開かれることでしょう。