気ままな読書ライフ

気ままな読書日記

「明治維新とは何だったのか」 半藤一利 vs. 出口治明

 

 

今朝は、初春らしい快晴。

いつものように、朝イチ、近くのウォーキングコースへ向かった。

都立狭山公園の早朝は、ジョギングをする人、ウォーキングをする人、ペットの散歩をする人、ラジオ体操をする人、自転車をする人、写真を撮る人、いろんな人が集まってくる。

 

写真の右手には、多摩湖の湖水が広がり、その向こうに、くっきり鮮明な富士山が望める。そして、左手には広大だがきれいに整備が行き届いた、狭山公園の自然が広がる。

 

この土手の斜面に埋められた石の整列が、朝日に照らされて、色とりどりに輝くのが美しい。

 

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昨日は、この本を読み終えた。

明治維新とは何だったのか  世界史から考える

明治維新とは何だったのか 世界史から考える

 

 

半藤一利氏は昭和5年(1930年)生まれ、方や出口治明氏は昭和23年(1948年)生まれ、と18歳もの年齢差がある。下手したら親子ぐらいの差がある。それに、半藤氏は、自称「歴史探偵」であり、「幕末史」という分厚い本も上梓されており、この対談では出口氏が、半藤氏の胸を借りる形で、対談が進んでいくんだろうなと勝手に予想していた。
 
出口氏が日本史のみならず世界史に精通された方だというのは、いろいろな情報から存じていたが、恥ずかしながらまだ著書を読んだことがなかったので、やっぱり年の功で、半藤さんのほうが対談をぐいぐいリードされていくんだろうなと勝手に思っていた。
 
半藤氏は歴史の探偵なので、歴史に詳しいのは当然だし、出版社の編集経験もおありだから、これはもうプロ中のプロ。一方、出口氏はライフメット生命の創業者であり、今は立命館アジア太平洋大学の学長さんなので、どちらかというと実業家イメージが強く、いくら詳しくてもプロ中のプロにはかなわないだろうと思った。
 
いやいや、本書は対談なので、歴史と言っても一般受けするような話に編集されているが、その対談に応じられる出口氏には余裕が感じられる。おそらくバックにある知識が凄いのだろうと思う。むしろ半藤氏のほうが、「自分の弱点である経済的な観点が、びっくりするほど完備している方」と、出口氏に尊敬の念をもって対談しているくらいだ。
 
この言葉どおり、出口氏は対談のところどころで、当時の各国のGDPの統計データなど経済データを出しながら歴史を語られる。出口氏は、ふだんから「タテヨコ(歴史と世界)」の視点を重視されているようで、本書のサブタイトルにも「世界史から考える」と世界に枠を広げられている。
 
さていよいよ対談。対談冒頭、この「本書のタイトル」となっている「明治維新」という言葉に、半藤氏がモノ申す。改元前後に、「明治維新」なんて言葉はなかったんだと。せいぜい「御一新」という言葉があったくらいで、「明治維新」なんて言葉は後付けだと。その理由も後の対談の中で説明されていくが、さすが探偵の歴史へのコダワリに、思わず「面白くなりそう」とワクワクがこみあげてきた。
 
一方、出口氏は冒頭、腰低く謙虚に対談に入っていかれました。やはり人生の先輩に対する敬意が感じられました。しかし、それは導入部だけで、対話に弾みがついてくると、もうを互いにガップリ四つで展開していかれます。
 
第3章の「幕末の志士たちは何を見ていたのか」では、当時の主要な人物についてのお互いの人物談義が交わされている。「幕末の志士たちは何を見ていたか」というより、「対談のご両人は、志士たちをどう見ていたか」というのが実質的なタイトルでしょう。
 
そして、けっこうな点で、両者の意見は一致していました。
幕末というと、維新の三傑西郷隆盛大久保利通木戸孝允についての評価が高く、坂本龍馬吉田松陰など小説の影響もあり、英雄的に語られることが多いが、二人の意見の一致で見ると、阿部正弘を維新のグランドデザインを描いた一番の功労者とし、そのデザインを踏襲し近代化を実質的に推し進めた、大久保利通を第二の功労者とし、半藤氏が思い入れが最も強い勝海舟の功績についても、出口氏も認めるところで、これがベスト3だったように感じる。
 
大河ドラマ「せごどん」では、西郷隆盛が主役で、大久保利通は脇役でしたが、本書では二人そろって、主役は大久保、西郷は脇役以下の捉え方でした。吉田松陰に至っては酷評でしかなく、維新の立役者はプロの目から見ると克明に評価がわかれるんだなと改めて実感した。
 
岩倉具視は、この時代最大の陰謀家(ワル)で認識が一致し、維新三傑亡きあと権力を握った山縣有朋についても厳しい評価だが、このあたりは一般の視点と一致するところかもしれない。
 
本書が「世界史から考える」と副題されているように、「鎖国で後れをとった世界の中の日本」という視点でとらえたときに、その後の日本再構築において、誰の功績がもっとも大きかったのかという視点からこの結論に達しているのではないかと思う。
 
巻末に、両著者オススメの関係書籍が紹介されていた。
半藤氏15冊、出口氏20冊。これらもそうだが、出口さんの本をもっと読んでみたい衝動に駆られている
。もちろん半藤さんのも!